親方コラム

2020年7月22日
朝から雨が降り、なかなか梅雨が明けない東京である。今日は七月場所四日目。若箭原が相撲人生最初の1勝目を勝ち取った。内容も申し分なく完勝だった。本場所の土俵の上というのは、本人は今まで味わったことの無い緊張感だったと思う。そして勝った瞬間の喜びも味わったことの無い嬉しさだったと思う。15歳の力士にとって素晴らしい人生経験になったことだろう。そして、八女の里は危なげなく二連勝。好調だ。ただ、まだ本来の相撲ではない。次は八女の里らしい押し相撲で勝って欲しい。まずは勝ち越して三段目に復帰することだ。
「八女茶より 渋みの勝る 八女の里」
西岩
2020年7月21日
早くも今日は七月場所三日目。西岩部屋では五人の力士が土俵に上がった。まずは若大根原。倍ほど大きな相手にスピードと上手さで勝った。相撲を初めてたったの四ヶ月であるが急成長である。二連勝スタートは立派なものだ。若田中は立ち合いから攻められたが土俵際でよく残し得意の右の上手を取っての寄り切り。スケールの大きい相撲だった。初白星は嬉しかったと思う。若金子は立ち合いも良く、相手の懐に入ったが、相手に上手を与えてしまい敗れてしまった。上手を与えない相撲を覚えて欲しい。若藤岡は今日も足が出なかった。今場所はまだ若藤岡らしい相撲が取れていない。気持ちを切り替えて行け。若松永は本来の突き押し相撲で完勝だった。若松永らしいスカッとする勝ち相撲であった。若松永の身体能力は計り知れない。今日は土用丑の日であったが西岩部屋は残念ながら「豚キムチちゃんこ」だった。
「うなぎより お財布事情で キムチ鍋」
西岩
2020年7月20日
東京は32度まで気温が上がり真夏日だった。今日は七月場所二日目。西岩部屋では四人の力士が土俵に上がった。今日私は序ノ口の審判だったので三人の新弟子の相撲を目の前で見ることができた。まずは若箭原。初めての国技館の土俵はどのように感じたことだろうか。結果は残念だったが相撲未経験で入門してきたので長い目で見ていきたいと思う。若大根原はボクシング経験者らしく、スピードと運動神経の良さで勝利した。若金子は自粛期間に稽古してきた立ち合いを本場所でもできた。それが勝利につながった。三人は序ノ口力士として相撲人生をスタートさせた。どう成長していくか楽しみである。そして、成長著しい若松永。攻める相撲を取ったが最後にまわしを取られて負けてしまった。もう三段目の力はついてきたと思う。若松永独特の躍動感ある相撲に期待している。
まだ二日目が終わったところだが、審判をしていて感じるのは、お客様のありがたさである。三月場所の無観客開催とは全然違う。無観客開催を経験したからこそ、お客様から力士への拍手がこんなにありがたいものなんだなと改めて実感することができた。
「無くなって はじめてわかる ありがたさ」
西岩
2020年7月19日
ついに待ちに待った7月場所が始まった。力士達は、この自粛期間に外出もせず毎日の稽古を頑張ったと思う。今日からは本場所の土俵で水を得た魚のように元気いっぱい暴れてもらいたい。今日は三人の力士が土俵に上がった。まずは若田中。憧れの国技館の土俵に初めて立ち緊張で何をやっているのかわからないままに相撲が終わってしまったと思う。誰でも最初はそんなもの。気にしないで次の相撲を頑張ってもらいたい。若藤岡は立ち合いは良かったが相手に押し込まれてしまった。次は攻める相撲を取ってもらいたい。八女の里は白星スタート。初日に勝つと良い流れで場所を進めることができるので大きい白星だった。ただ本来の相撲ではなかったので次は前へ出る相撲を取ることだ。
私にとっても長い15日間の戦いが始まった。
西岩
2020年7月15日
大相撲七月場所は有観客での開催が決まった。賛否両論あると思うが、力士にとっては嬉しいニュースであり、私も素直に喜んだ。三月の大阪場所は無観客での開催で、審判をしていても何か物足りない感じがした。それと同時にお客様のありがたみが心に染みた。やはり大相撲はお客様あってのものだと思う。稽古場も新型コロナウイルスが発生する前は、毎日のように見学者が訪れ、稽古をする力士にとっても、励みになっていた。しかし今は見学者を受け入れることができず「無観客」の稽古場である。早く稽古場にも以前のような活気が戻って来て欲しい。
さあ、いよいよ七月場所が始まる。自粛期間に鍛えた成果を発揮し、九人全員に勝ち越しをしてもらいたい。土俵に上がったら相手を寄せ付けず、土俵下まで吹っ飛ばして欲しい。そう、密にならずソーシャルディスタンスだ!
西岩
2020年7月12日
ついにプロ野球やJリーグが有観客で試合が行われた。テレビで見ただけだが、やはり球場やスタジアムにお客様が入り、その前で選手がプレーする。スポーツはプレーする側と応援する側が一体になって初めて感動が生まれると感じた。もちろん相撲も館内にお客様が入りその前で力士達は良い取り組みを披露する。これが大相撲である。部屋の力士達もたくさんのお客様の前で早く相撲を取りたいことだろう。あ、まだ番付が下位なので普段から無観客に近い状態だからあまり変わりはないか。早く強くなって番付を上げ満員の館内で相撲を取ってもらいたい。一万人のお客様に四方から見られ、その中で一対一で相撲を取るのは緊張するものだ。勝ち越しを懸けたり、昇進を懸ける取り組みになると足がガタガタ振るえ、その中で自分の力を発揮しなければならない。そして勝って満員のお客様から拍手をいただいた時は、なんとも言えない嬉しさと、清々しい気持ちになるものである。普通の生活ではなかなか経験できない喜びを早く我が弟子達にも経験してもらいたいものだ。力士としての喜びはそこにある。腹一杯美味しいものを食べお腹を出して寝ることが力士の喜びではない。
西岩
2020年7月10日
僭越ながら本日は私の誕生日であった。今年は人生で初めて東京の自宅で家内と娘と過ごす誕生日となった。といっても新型コロナウイルスの影響で不要不急の外出はできない状況なので自宅でささやかな誕生日を過ごした。そう、私の誕生日など不要不急のものだ。そして私にはもう一つ家族がある。9人の弟子達だ。弟子達は家内と相談し、こんな状況なので、手作りのケーキを作り、音程が外れたハッピーバースデーを歌いながらケーキを持ってきてくれたのだ。早速皆んなで食べてみた。皆んなの気持ちが込もったケーキなので有名パティシエが作るケーキより美味しく、今まで食べた中で一番美味しかった。こんな美味しいケーキはどこにも売っていない。そして外出禁止なのでプレゼントではなく弟子一人一人から手紙をもらった。その場で読むと泣いてしまい、親方の威厳が保てなくなるので、後で一人で読むことにする。こんなことしてもらったら明日からは厳しく怒れないな。いやいや遠慮無く厳しくするよ!それにしても一年に一度、主役になれる誕生日はいいものだ。こんな私を祝ってくれる方々には感謝である。ところ私は何歳になったんだ?34歳だ。あ、44歳か。
西岩
2020年7月5日
いよいよ七月場所まであと二週間となった。まだ正式決定ではないが本場所の開催を信じて稽古をやるだけだ。先日、一枚のポスターに目が止まった。柔道の安昌林選手のポスターである。安選手は日本で生まれ育ち、韓国代表で東京オリンピックを目指している選手である。そして金メダルの有力候補でもある。そのポスターには安選手の言葉でこう書かれている「俺が負ければ家族が泣く。試合は「死合い」。負けは死を意味し勝つ事は生を意味する。俺が寝ている間も強いやつは練習している。追い込まれて出る技が真の技。是が非でも勝つ。食事、睡眠、全てがトレーニング。正月は人が作ったものだから正月も練習する。オーバーワークは一流選手だけが使う言葉。センスがなければ三倍努力。何がなんでも東京オリンピックで金メダルを獲る」と。私はこのポスターに感動し、スマホでこの写真を撮り、部屋で弟子を集めて読んで聞かせた。力士はこれくらいの気持ちを持って人生を懸けて努力してもらいたい。ちなみに、安選手はこの言葉を中学生の頃にノートに書いたものだそうだ。驚いた。西岩部屋の力士達の中学生の頃のノートを見てみたい。いや、やっぱりやめておこう。
西岩
2020年7月1日
今日から七月が始まった。七月は七夕があったり、どうでもいい私の誕生日があったり、子供の頃は学校が夏休みに入ったりと楽しみなイベントがたくさんある。そして、梅雨が明けて入道雲が現れ夏本番といった季節になる。今日の東京は嵐のような天気だった。嵐といってもジャニーズではない。雨と風が強かった。この雨の中、屋上に洗濯物を干しっぱなしにし、強風で隣の家の屋上まで物干し(タコ足?)ごと洗濯物を飛ばしてしまった力士がいた。家内と力士で隣の家に謝って洗濯物を取りに行く始末、、、。それにしてもこの嵐の中、洗濯物を干したままにするとは。まさに、嵐にしやがれ、、、か。話は戻るが、七月になっても自粛生活なので私の誕生日も自粛にしよう。そうすれば歳をとらずにすむ。永遠の43歳だ。
西岩
2020年6月30日
あっという間に六月も今日で終わり。明日からは七月に入る。光陰矢の如しという言葉の通り、時が経つのは本当に早い。このままあっという間に正月を迎える事になるのだろうか。この半年間、コロナ、コロナで大変な日々を過ごしてきた。早く通常の生活に戻ってもらいたいものだ。100年前にも感染症が相撲界に猛威をふるい「相撲風邪」と呼ばれたそうだ。当時、台湾が日本の統治下にあり、大相撲台湾巡業が行われている最中の事だった。20人以上の力士が倒れ3人が亡くなった。その謎の病気が相撲界に広がり直後の本場所では休場者が相次いだ。そしてその謎の病気は当時大流行したスペイン風邪だったそうだ。現在の新型コロナウイルスも100年に一度の危機と言われている。しかし我々力士は体が大きく丈夫で健康が取り柄だ。必ずやこの危機に打ち勝ち通常の生活を取り戻したい。さあ、明日からは七月だ。気持ちを切り替えて七月場所目指して頑張ろう。今日のオチは無し。
西岩